国際交流 『岡山県国際課 世界に翔けボランティア事業』
 【日程】 19年12月22日(土)〜28日(金)

 【目的】
目的:国際協力・貢献活動が多様化する中で、様々な分野に携わる人材がNGOや国連機関において求められており、また、人材は国際協力・貢献活動を行う上で根幹をなすことから、人材の育成・養成は、岡山県の国際協力・貢献施策の重要な柱の一つである。このため、21世紀を担う高校生が世界的な視野を持ち、世界に翔くことのできる人材となるよう海外短期研修を実施する。

 (生徒の感想)
 貧困、地雷、ポル・ポト政権―。「カンボジア」と聞いて一番に思い浮かぶものではないだろうか。もちろん、アンコール・ワットやトンレサップ湖などの有名な所も出てくる。しかし、現地を訪れるまで私の中の「カンボジア」は暗くて重い歴史を持つ国でしかなかった。
 カンボジアでの初日は、ツールスレイン博物館やキリングフィールドを訪れ、ポル・ポト政権時代について学んだ。狭くて息苦しい独房、尋問に使われたという生々しい鉄ベッド、多くの人々を苦しめた残酷な拷問器具。壁一面に貼られた人々の写真からは、恐怖と絶望に支配された何とも言えないものを感じた。この他にも、遺骨だなや当時の拷問の様子を描いた絵画なども展示されていて、これが同じ人間のすることだろうかと何度も目を疑った。また、キリングフィールドの慰霊塔には、処刑された人々のおびただしい数の遺骨や衣服などが安置されており、それらを前にした私は何も言えなかった。遺骨が掘り出された大きな穴や子どもを打ちつけて殺したと言われている木の周辺、そして私たちが歩いて通った地面にも回収されなかった細かい骨やその破片、衣服の一部がたくさん覗いていた。当時の話を聞けば聞くほど、私の中の恐怖や悲しみは増し、それと同時に戦争というものへの怒りが膨らんでいった。
 幾つもの感情が渦を巻く中、私はガイドさんが話してくれたある内容に驚かされ、また印象に残った話があった。ポル・ポト政権時代に親や子、兄弟が殺されたというつらい過去を持つ人々は今でも大勢いる。そして、その人たちと一緒に、かつてはポル・ポト派の人間として残虐な行為を行っていた人々が共に共存しているというのだ。初め聞いた時は、信じ難かった。たとえその人自身が自分の身内を直接手に掛けていなくても、憎むべき対象として見てしまうはずだ。私だったら絶対に復讐をしているだろう。それなのに共存をして今日に至っている。それも、国王の一言だけで。カンボジア人の心が広いのか、それとも国王への信頼が厚いのか。いずれにせよ、私はこの事実に唯々驚かされるばかりだった。
 元気な声や走り回っている姿、そして笑顔で「こんにちは」と迎えてくれたことが印象的だったチェイ小学校日本語教室に通う子どもたち。子どもたちはみんな檜尾先生のもとで日本語の勉強に励んでいる。普段の授業の様子を見学したが、子どもたちの日本語を学ぶ姿勢には驚かされた。どの子も熱心にまた楽しそうに勉強をしていた。授業見学後は、私たちが用意していた遊びをしたり、グループに分かれてお話しをするなど充実した時を過ごすことができた。私は4人の同年代の子と仲良くなった。その際、彼女たちに将来の夢を聞いてみると、「ガイド」「レストランのウェートレス」「ホテルのスタッフ」と笑顔で答えてくれた。とてもしっかりしていて、今の日本の子どもとは比べものにならないくらいの志を持っていると感じた。
 またその日の夕食時には、檜尾先生から貴重なお話をたくさん聞くことができた。先生の「あの子たちはどんなに頑張っても日本へは行けない」という言葉がとても印象に残った。話した女の子たちが「日本へ行ってみたい」と言っていたからである。あんなに頑張って日本語を勉強しているのに。その時に改めて貧困という現実を知った。しかし、檜尾先生のお話を聞いていると、カンボジア人の豊かな部分も見えてきた。それは「心」だ。先生が「外食へ行こう」と誘ってもその子たちは「そのお金で小学校の子どもたちに服を買ってあげて欲しい」と言うそうだ。別の場所で貧しい生活を送っている両親のことを常に思い浮かべ、食べる物などを控えたりもすると言う。自分のことでいっぱいなはずなのに、どうして他人のことまで思いやることができるのか。それは、相手が自分と同じ苦しみを抱えているからではないかと思う。同じ苦しみを抱えているからこそ、相手の気持ちが理解でき、また少しでも良くなって欲しいと思うようになるのだろう。何でも揃い、不自由なことがない日本では感じることのないものだと思い、恥ずかしくなった。日々の生活が貧しくても心はとても豊かなカンボジア人と豊かになり過ぎて他人を思いやる心を忘れた日本人。私たちはカンボジアの人々の温かい心から今一度、思いやりの心を学ぶべきだと思った。
 今回の研修では幾つもの国際協力団体を視察した。どの団体でもスタッフの方々からはカンボジアへの熱意を感じた。お話を聞いていて、支援とはただお金を使ったり、気持ちがこもっていれば良いというわけではないことが分かった。何をすれば良いのか。それがこれからの課題である。また、カンボジア人の温かく豊かな心に触れ、カンボジアは重い歴史や経済的問題から良い印象を受けないが、もっとカンボジアを多くの人々に知ってもらいたいと思う。そして、今何ができ、必要とされているのかを考えて、少しでも国際協力に興味を持ってくれる人が増えて欲しい。この研修で感じたことをこれからも忘れずに、多くの人に伝えていきたい。

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