〇令和4年度3月1日 卒業式 式辞

 瀬戸内の島々がはるかにかすみ、校庭の木々もかすかに芽吹く今日の良き日、岡山県立倉敷鷲羽高等学校第十五回卒業証書授与式を挙行できますことを大変光栄に思い、心より感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を手にされた第十五期生二百五名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本校での三年間を振り返り、ついに今日の日を迎えたことに胸が高鳴る思いでしょう。この三年間、勉強や進路、人間関係等、様々なことで悩んだこともあると思います。それらの困難を乗り越えて努力してきた皆さんに心から賛辞を送り、祝福いたします。そして、皆さんが今日の日を迎えることができたのは、これまで深い愛情を注いで支えてこられた保護者や家族の方々、お互いに励まし競い合ってきた友人たち、温かいご理解とご支援をいただいている地域の方々、そして今までお世話になった多くの先生方のおかげであることを、決して忘れないでください。
 さて振り返ってみますと、十五期生の皆さんは一年生の終わりごろからコロナ禍で様々な制約を受けた三年間だったと思います。突然、学校が休校になったり、熱心に打ち込んでいた部活動が禁止になったり、あげくの果ては高校生活で最も楽しみな行事の一つである修学旅行が中止になり、龍王祭も規模を縮小しての開催になりました。自分たちのせいではなく、自分たちではどうしようもない、予測不可能な状況の中で高校生活を送らざるを得ませんでした。楽しみにしていたことや自分が青春をかけて頑張っていたことができなくなり、我々大人が計り知れないほど、本当に悔しい思いをしてきたと思います。
しかし、そのような状況の中でも不平不満を言うことなく、工夫しながら今できることを一生懸命やっている皆さんの姿を見ると、申し訳ないのと同時にたくましさを感じました。ぎりぎりの条件で開催した球技大会や龍王祭ではマナーを守っての演技と応援に感動しました。皆さんの持てる力やエネルギーは不測の事態に減少することなく、ますます力強く発揮されることがわかりました。コロナ禍において皆さんは逆境に耐え抜く力と工夫して何かをやり遂げる創造力を身に付けたと思います。
 皆さんは未来創造科の最後の生徒でした。先日「つなぐ集会」としてそれぞれのモデルの代表が一・二年生に自分たちの今までの取組を伝える会がありました。その最後に発表者たちから次のような言葉をもらいました。「鷲羽高校に来てよかったと思えることはいろんな新しいことにチャレンジできる機会があったこと。勇気を出して挑戦し、失敗しても次の年も挑戦し続けることができた。今の自分の進路が実現したのも挑戦できる様々な機会があったおかげだ。」と。こんなうれしい言葉はありません。「目の前のチャンスに果敢にチャレンジする。失敗してもくじけない。周囲への感謝の気持ちを忘れない。」これこそ未来創造科の建学の精神であるアントレプレナーシップ、すなわち起業家精神ではないでしょうか。皆さんは自分の未来も鷲羽高校の未来も立派に創造してくれました。まさに「You Make Washu!」そのものです。この皆さんが培ってきた未来創造科の真髄は確実に次の世代へと引き継がれています。未来創造科は幕を閉じてもその精神や意気込みは決して色あせることなく、さらに輝きをまして鷲羽高校に生き続けることでしょう。
 これからの時代は、VUCA、すなわち、先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代だと言われています。日本から世界へ目を向けても、地球温暖化、資源とエネルギー、環境、経済、少子高齢化、そして戦争等、様々な問題があります。そしてそのどれを取ってみても一人の人間、一つの地域、一つの国だけでは解決できません。これからの時代は地球全体の倫理、利益という世界観が重要になってきます。それと共に重要なのは私たち個人個人の人間性や取組です。どんなに大きな問題でもそれの解決に向かうのは個人個人の取組に他ならないからです。誰かが何かをしてくれるのを待つのではなく、自分がどうしたいのか、自分なら何ができるのかを考えて一歩踏み出し、自分の周りの人と繋がり、共生できる社会を作って行くしか方法はありません。
世の中がどのように変わろうとも人として大事なことを皆さんは本校で学んできました。それは本校の校訓の「誠実」「創造」「貢献」です。これから皆さんは様々な人に出会い、様々な意思決定の場面があるでしょう。その時々に、自分の心に対して、周りの人に対して、仕事に対して、社会に対して誠実であってほしいと思います。そして創造です。これからの未来は予測不能ではありますが、未来を創造するとは今の自分にとっての希望を作ることで、皆さんのそれぞれのやり方でそこに向かって進んでほしいと思います。最後に貢献です。若い皆さんは社会の希望です。皆さんが、生き生きと豊かな毎日を過ごし、学び、働き、思いやりの心を持って自分も周りも少しでも幸せな気持ちにすることこそが、豊かな社会を築くことに貢献しているのです。
 終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業誠におめでとうございます。大事に慈しみ育ててこられましたお子様の立派に成長された姿に、感慨もひとしおのことと存じます。この三年間本校の教育活動に深いご理解と多大なご支援を賜り、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。それでは、第十五期生の卒業生の皆さんの前途が光輝き、健康で幸せであることを願い、式辞といたします。

令和四年三月一日        
岡山県立倉敷鷲羽高等学校  
   校長  三村 直子