〇令和3年度 入学式 式辞

 やわらかな春の日差しの中で、山の木々の新芽が少しずつ芽吹き、瀬戸内海を渡る風が心地よい今日の佳き日に、岡山県立倉敷鷲羽高等学校第十七期生の入学式を挙行できますことは、私たち教職員一同にとりまして、この上ない喜びであります。
 ただいま、百四十二名の皆さんに入学を許可いたしました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員をはじめ、皆さんの先輩となるすべての在校生が、皆さんの晴れの入学を祝福し、心から歓迎いたします。
 皆さんが念願通り、本校に入学できましたのも、一つには皆さん自身の平素からのたゆまぬ努力の成果でありますが、自分の力だけで今日の日が迎えられたのではなく、小学校、中学校の先生方の温かいご指導や、皆さんを慈しみ励ましてくださったご家族や周囲の方々の愛情や助けが、皆さんを支えてくれたことも決して忘れてはなりません。
 本校は平成十七年に日本唯一の未来創造科として創立しました。本校に至る「希望の坂」を上ったところに集い、学び、自分のそして社会の未来を創造していくという崇高な理念のもとに作られました。そして、時代と社会の変容に応じて、その崇高な理念を受け継ぎ、より具現化するために昨年度より「普通科」と「ビジネス科」に学科改編しました。学科は改編しましたが、本校の建学の精神、アントレプレナーシップ、起業家精神は健在です。それは「よりよい社会を目指して、自分の頭で考え、自ら工夫し、行動し、果敢にチャレンジする姿勢」を意味します。皆さんは新しくなった学科で明確な目標を持って、授業や学校行事、部活動やボランティア活動等に果敢にチャレンジしてください。
 現在の世の中は今までに予想できなかったことがいろいろと起こり、知識や技術だけでは解決できない様々な問題が複雑に絡み合っています。コロナ禍で今まで私たちが当たり前のようにやってきた多くのことができなくなりました。グローバル化した社会では文化も経済も世界と繋がって発展してきましたが、コロナウイルスをはじめ、気候問題やエネルギー問題等に見られるように、もはや一部の人々や一部の国だけでは到底解決できない問題が山積しています。
 しかし、希望はあります。このように制約が多い社会の中で様々な新しいアイディアが生まれ、今まで考えもつかなかったようなことが可能になっています。時代はさらにどんどん変化しており、デジタル庁が創設されたように、デジタル・トランスフォーメーション、デジタルへの大変革の時代へと突入しました。皆さんはこのような時代の最先端たるべく、一人一台端末を持つことになりました。これからの社会ではAI(人工知能)など最先端の科学技術を利活用して、自ら考え、主体的に責任を持って、異なる考えの人々とも協働して、忍耐強く、社会をより良い方向へ変革していこうとする力が求められます。
 これから本校で学ぶ皆さんには、このような社会の中で豊かに生きていくために、まずは高校3年間、何事にも自ら進んで前向きに取り組んでもらいたいと思います。教科の勉強は自分の将来の夢を実現させる基礎となる知識や能力のために非常に重要です。それと平行して身の回りの課題を見つけ、他の人と協働して解決する方法を学ぶ探究学習もますます重要になってきます。本校の児島未来学では教室内にとどまらず、地域と繋がり、地域の問題解決の方策を自ら考え実行していきます。毎日の少しずつの努力や経験が3年間積み重なり、自分の未来をつかみ取る大きな力となっていきます。
 ここ児島の地は今から約四百年前は、一帯に広がる海に点在する島の一つでした。その後、干拓によって一帯が陸続きになり、塩に強い綿花の栽培が始まり、繊維産業が発展し、現在へと続いています。いつの時代も世の中を切り拓いていこうとする起業家精神と人々の並々ならぬ努力によって時代の先駆けとなってきました。この児島の地で学ぶ皆さんも、先人の志を受け継ぎ、未来を自らの力で切り開き、様々な形で社会に貢献する人物になることを願っています。
 ご列席の保護者の皆様、お子様のご入学、心からお祝い申し上げます。本日より、お子様を本校でお預かりいたしました上は、すべての教職員がお子様一人一人の成長、進路の達成、自己実現に向けて、誠心誠意、最大限の努力を払う所存でございます。しかし、学校教育だけでは限界があります。お子様の成長、飛躍のためには、保護者の皆様と学校が密に連携しなければなりません。どうか、本校の教育に対しましてご理解・ご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 本日入学されました新入生の皆さんが今日の初心を忘れることなく、決意を新たに、有意義で充実した高校生活を送られますよう心から期待いたしまして、式辞といたします。

令和三年四月九日
校 長    三 村  直 子