○第17回 卒業式 式辞

 やわらかな春の日差しの中で木々の若葉が芽吹こうとしている今日の佳き日に岡山県立倉敷鷲羽高等学校第十七回卒業式を挙行できますことを大変嬉しく光栄に思います。十七期生の卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。三年間の本校の課程を無事終了し、卒業を迎えたことで今胸がいっぱいのことでしょう。皆さんが今日の日を迎えられたのも、皆さん一人一人の努力と共に、家族、友人、先輩後輩、先生、地域の方をはじめ校外の多くの方々のおかげです。その人々への感謝の気持ちを忘れないで胸を張ってこの学び舎を巣立ってほしいと思います。
 保護者の皆様、本日はお子様のご卒業本当におめでとうございます。入学してから今日までご心配なこと、喜ばしいこと様々なことがあったと思いますが、立派に成長されたお子様の晴れの姿に感慨深い思いがあることと思います。
 卒業生のみなさんが、入学した時はコロナ禍の最中でしたが、徐々に終息に向かい、少しずつ日常を取り戻すことができました。今年度の龍王祭はほとんど制約なく行うことができました。特に体育館でのオープニングや体育祭のパフォーマンスで皆さんが大きな声で歌ったり踊ったりしているのを見ることができ、大変うれしかったのを思い出します。思い切り笑ったり、歌ったり、共に活動したりできる日常がどんなに貴重な日々であるか身に染みて感じたことでしょう。
 本校の目標は「You Make 鷲羽! 自律 挑戦 思いやり」です。何度言ったかわからないこの言葉ですが、最後にもう一度言います。You Make 鷲羽!には「あなた方一人一人が鷲羽高校の大事な一員であり、一人一人の取組が鷲羽高校を作っている。そしてその取組の一つ一つが社会に繋がっている」という思いを込めています。自律とは自分で考えて何が正しいか判断し行動することです。挑戦とは勇気を出して物事に前向きに取り組むことです。そして思いやりとは自分も他人も大事にすることです。自分の三年間を振り返っていかがでしょうか。就職先、進学先、進むべき道を決めてその第一歩を踏み出そうとしている皆さんはきっと自律できていると思います。また、勉強や部活動を一生懸命続け、学校行事やボランティア活動、試合やコンテスト、検定や試験などいろんなことに挑戦してきたと思います。ちょっと勇気を出して何かに挑戦すれば新しい人と出会ったり、普通ではできない経験ができたり、自分の視野が大きく開けていくことを実感した瞬間があったと思います。それから、社会の中で一番大事なのは思いやりです。学校生活において、お互いに気持ちよく毎日を過ごすことができるようなちょっとした言葉がけや、友達の親切な行いで救われたこともあったと思います。
 各コースの授業や発表会で、皆さんが一生懸命取り組んでいる姿を見るのは喜ばしいことでした。文理コースの学習合宿でビートルズの英語の歌を訳したり歌ったりしたこと、いつもおいしそうなにおいをさせててきぱきと調理実習をしていた食物コース、いただいたクッキーは本当においしかったです。保育実習に向けて紙芝居や合奏・ピアノの練習に余念がなかった保育コース。みんなのコーラスは印象深かったです。どこからこんなパワーと集中力が出てきたのかと思える体育コースの集団行動は圧巻でした。そして、商品開発でタコカレーを作って販売したり、地元企業の方々の前で鷲羽山ハイランドの活性化案を発表したりと常に実社会と向き合い真剣勝負をしていたビジネス科。これらのどのような活動にも皆さんの成長が感じられ、頼もしく思いました。
 卒業を前に次のように語ってくれた人たちがいます。「受験のとき面接やプレゼンの練習をしっかりしてもらえたので本番でもすらすら言えて心強かった。」「いろんなことに挑戦できた。鷲羽フェスタの実行委員や東京でのポスターセッション参加など違う世界を経験することができた。」「部活動で人として成長できた。」「部活動で団体競技をやりチームとして協力できた。」「こんなに気の合う人はいないと思える友達に出会えた。」「ある授業は今まで十二年間で一番面白く、ドキドキ感もあり、先生の話から情景が見えるような授業だった。」このような言葉は皆さん自身の自信になるだけでなく、残された鷲羽高校の在校生や教員にとっても希望となるものです。つらい時や悲しい時もあったと思います。それを胸の奥深くにしまって乗り越えて進んできた皆さんがこのように思って卒業していくのは本校の教員の私たちにとってこの上ない喜びです。
 これから皆さんが生きていく時代は社会の中で様々な新しいアイディアが生まれ、今まで考えもつかなかったようなことが可能になっていきます。AIやビッグデータの活用が当たり前となったデジタル・トランスフォーメーションの時代へと突入しました。だからこそ、それらを活用する私たち人間が、自ら考え、主体的に責任を持って、異なる考えの人々とも協働して、忍耐強く、社会をより良い方向へ変革していこうとする意志と働きかけがますます重要になってきます。自分の周りにあなたの力を求めている人が必ずいるはずです。また、もっと広い社会、世界へ目を向ければ不安と混乱とどうしよもない無力感に襲われそうな自然災害や戦争が起こっています。現在のグローバル社会では世界のどこかの出来事もまわりまわって、私たちの生活に影響を与えています。だからこそ、私たちはこれからも何が正しく、どう行動するべきかを考え、学び続ける必要があります。
ここ児島の地は今から約四百年前は、一帯に広がる海に点在する一つの島でした。その後、干拓によって一帯が陸続きになり、塩に強い綿花の栽培が始まり、繊維産業が発展し、現在へと続いています。いつの時代も世の中を切り拓いていこうとする強い意志と人々の並々ならぬ努力によって時代の先駆けとなってきました。この地で学んだ皆さんも、先人の志を受け継ぎ、豊かな将来を自らの力で切り開き、様々な形で社会に貢献する人物になることを願っています。
 終わりになりましたが、保護者の皆様、三年間、様々な面で本校の教育活動に深いご理解と多大なるご協力をいただきまして、誠にありがとうございました。今後はお子様の母校として末永くご支援いただければ幸いです。それでは十七期生の前途が健やかで輝かしいものでありますように、また本日ご臨席を賜りました皆様がご健康でご多幸でありますように、心よりお祈り申し上げ、式辞といたします。