○令和5年度 第3学期 終業式 式辞

令和6年3月19日

「あなたは、誰かの大切な人」

 みなさん、おはようございます。いよいよ、令和5年度も今日で終わりとなりました。1年間を振り返っていかがですか。楽しく充実した学校生活を送れたでしょうか。3学期の始業式に、“Now or Never!” 「チャンスは今、これを逃せば二度とない!」だから、目の前に何かに挑戦する機会があるときは、必ず挑戦してもらいたいという話をしました。いかがですか。みなさんはチャンスを見逃していませんか。チャンスをちゃんとゲットしていますか。これからもやらないで後悔するより、失敗するかもしれないし途中で挫折するかもしれないけどとにかくやってみようと前向きに考えて、目の前のことに挑戦する方を選んでください。
 今日は「あなたは、誰かの大切な人」ということをお話ししたいと思います。みなさんは、原田マハという作家を知っていますか。彼女は海外の美術館で働いた経験のある作家で『たゆたえども沈まず』や『暗幕のゲルニカ』など、ゴッホやピカソなど画家を主人公にした小説をたくさん書いています。最近私は、原田マハの『あなたは、誰かの大切な人』という短編集を読みました。主人公はみんな、仕事や恋愛、家族関係がうまくいかず、迷ったり落ち込んだりしながらも、目の前の仕事に精を出して生きています。そして、関わりたくないと思っている人や自分の意に添わない人が必ず近くにいます。けれど物語が進んで行くとその人たちが必ず誰かのなくてはならない大切な存在になっているということが長い年月の後にわかるという話です。それがわかったとき主人公たちは心が満たされます。ハラミちゃんが言っていた「自分にとって大切な人に今出会っているかもしれないし、ずっと後になってから出会うかもしれない」という言葉を思い出しました。
 私はこの学校で授業や行事を見る中で、みなさんが、誰かにとって大切な人であり、これからもそうであり、そして社会にとって大事な人になると思える場面がよくあります。まず、「生活と福祉」の授業を見学した時です。その日は高齢者の介護についての授業でした。お互いに高齢者と介護する人に交互になってベッドに寝かしたり起こしたりする実習をしていました。そのとき、生徒の一人が私の方を向いて冗談で「高齢者がここにいます。どうぞベッドに横なってください。」と言いました。それを聞いて、高校生のみなさんから見たら私は高齢者に近く、これから10年後、20年後の将来の社会を担っているのは今の高校生なんだということを本当に強く感じました。それは介護のことだけではありません。先日卒業していった3年生の中で次のように言った生徒がいます。「私は将来、起業して経営者になりたい。だから、高校生のうちにできるだけいろんな経験をしておこうと思ってやっていました。」その生徒は数学などあまり得意そうではなく大丈夫かなと思っていましたが、こんな気持ちで日々頑張っているんだということがわかりとても頼もしく感じました。そして途中で挫折や失敗があるかもしれないけど、きっと将来社長になっているだろう、そして経済を回しているだろうと思えました。また、みなさんの多くがボランティア活動に参加しています。その一人に私がボランティア活動をした感想を聞いたとき「私でも社会の役に立てるのではないかと思えた」と言ってくれました。今は何ができるか、何になるか明確な答えがあるわけではないけど、そう思えたことはこれから先、何をやっても前向きでいられると思います。それは素晴らしいことだと思います。そして、先日2年生が全員参加した児島しごと博でも本校の卒業生が社会人として仕事の説明をしてくれ頼もしく思いました。ある日、私がお世話になっている車屋さんで点検をしてもらっていたら「先生、僕のこと覚えていますか。○○です。」と言って、その店の若い従業員が話しかけてきました。もちろん覚えていました。鷲羽高校にいたころは英語があまり得意ではなく笑顔で挨拶するタイプではなかったのですが、本当ににこにこと礼儀正しく話しかけてくれとてもうれしかったです。このような生徒や卒業生に出会うと、本当に、「You Make鷲羽!」、すなわち、あなた方一人ひとりが鷲羽高校の大事な一員で、今高校時代にやっている一つ一つの取組が鷲羽高校を作っていて、それが社会やあなたの将来につながっているということをひしひしと感じます。そう感じさせてくれるみなさん一人ひとりが私にとって大切な人です。そして高校生のみなさんはみんな今も将来も必ず「誰かの大切な人」なのです。それがわかるのは自分の周りにいる人だから、自分では気付かないかもしれません。でも必ずいつかどこかで誰かがあなたのことを「大切な人」と思っています。
 来年度は3年次生と2年次生になるみなさん、今度は以前にも増して「自分が鷲羽高校を作っている、I Make 鷲羽!」という気持ちを持って、何事にも挑戦してください。皆さんの活躍を期待しています。私も先ほど高齢者に近いと言いましたが、歳はとっても、みなさんと一緒に過ごしているといつまでも心は若く青春時代を送っている気がします。みなさんに負けないようにこれからも新しいことにどんどん挑戦していこうと思っています。それでは健康に注意して楽しく充実した春休みを過ごしてください。